その不調、自律神経が原因?病院へ行くべき症状の目安と何科を受診すべきかを解説
「原因不明のめまいや続く倦怠感、気分の落ち込み…。もしかして自律神経のせい?」と一人で不安を抱えていませんか。この記事は、そんなあなたの悩みに専門家の視点からお答えします。
病院へ行くべきかどうかの具体的な目安から、何科を受診すればよいか、さらには病院でどのような検査や治療が行われるのかまでを分かりやすく解説します。
その原因不明の不調、もしかして自律神経の乱れが原因?
全身の多様な不調は自律神経の乱れが関係している可能性があります。
自律神経は、心臓の拍動・呼吸・消化・体温調節など、生命を維持するための重要な機能を私たちの意識とは無関係に24時間コントロールしている神経です。
これは、活動時に優位になる「交感神経」と、休息時に優位になる「副交感神経」の2つが、シーソーのようにバランスを取り合うことで成り立っています。
しかし、何らかの原因でこのバランスが崩れると、特定の臓器に異常がないにもかかわらず、めまい・動悸・倦怠感・頭痛・不眠といった、心と体の両面にわたる様々な不調が現れることがあります。
これらの症状が一般的な検査で説明できない場合、自律神経の機能不全が背景にあると考えられます。
自律神経が乱れると、心と体にどんな症状が現れるの?
さまざまな身体的症状に加え、不安や抑うつなどの精神的症状が現れることがあります。
自律神経のバランスが崩れると、その影響は全身に及びます。心と体は密接に関連しているため、これらの症状が複数重なって現れることも少なくありません。代表的な症状は以下の通りです。
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身体的な症状
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全身症状: 倦怠感、めまい、微熱、立ちくらみ、ほてり、発汗、手足の冷え
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循環器: 動悸、息切れ、胸の圧迫感
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消化器: 吐き気、胃の不快感、便秘、下痢
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その他: 頭痛、肩こり、耳鳴り、睡眠障害(不眠、過眠)
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精神的な症状
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理由のない不安感、イライラ
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集中力や意欲の低下
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気分の落ち込み(抑うつ)
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感情の起伏が激しくなる
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ストレスや生活習慣だけじゃない?自律神経が乱れる原因とは?
ストレスや生活習慣に加え、ホルモンバランスの変化や特定の疾患も原因になることがあります。
自律神経が乱れる最大の原因は、過度な精神的・身体的ストレスや、睡眠不足・不規則な食生活といった生活習慣の乱れです。
しかし、原因はそれだけではありません。女性の場合、月経周期や妊娠・出産、更年期など、女性ホルモンのバランスが大きく変動する時期に自律神経の乱れが起こりやすくなります。
また、甲状腺機能障害などの内分泌系の病気や、神経系の病気が背景に隠れていることもあります。
このように、原因は一つではなく、元々の体質、ストレス、生活習慣、ホルモン変動といった複数の要因が複雑に絡み合って発症することが多いのが特徴です。
放置するとどうなる?自律神経の失調が引き起こす他の病気とは?
症状の慢性化に加え、うつ病や不安障害、生活習慣病のリスクが高まります。
自律神経の失調状態を治療せずに放置すると、心身の不調が慢性化し、生活の質(QOL)が著しく低下します。
精神面では、続く不調からうつ病やパニック障害、全般性不安障害といった精神疾患へ移行するリスクが高まります。
身体面では、自律神経が担う血圧や血糖、免疫などの調節機能が低下するため、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の発症・悪化につながることがあります。
また、消化器系の不調が続くことで、過敏性腸症候群(IBS)と診断されるケースもあり、早期の適切な対処が重要です。
市販薬やサプリメントで、症状を和らげることはできる?
一部の症状を一時的に緩和できますが、根本的な解決にはならず注意が必要です。
頭痛に対する鎮痛剤、胃の不調に対する胃腸薬など、市販薬はつらい症状を一時的に和らげる「対症療法」として役立つ場合があります。
しかし、これらは自律神経のバランスそのものを根本的に整えるものではありません。原因が解決されないまま市販薬に頼り続けると、診断が遅れたり、薬の乱用につながったりする危険性があります。
また、リラックス効果を謳うサプリメントもありますが、その効果は限定的であり、医学的に有効性が確立されているものは少ないのが現状です。
不調が続く場合は自己判断で対処せず、専門医に相談することが最も安全で確実な方法です。
どんな症状が出たら、病院へ行くことを考えるべき?
症状が日常生活に支障をきたしたり、2週間以上長引いたりする場合は受診を。
めまいや立ちくらみで倒れそうになる、動悸が激しく不安になる、頭痛や腹痛で仕事・学業に集中できないなど、症状によって普段の生活に具体的な支障が出ている場合は、ためらわずに医療機関を受診してください。
また、一つ一つの症状は軽くても、複数の不調が2週間以上続いている、セルフケアを試しても改善しない、といった場合も専門家による診断が必要です。特に、これまでに経験したことのない激しい頭痛や胸の痛み、呼吸困難など、重篤な病気の可能性が疑われる症状がある場合は、速やかに救急外来などを受診しましょう。
心療内科?それとも内科?何科を受診すればいい?
まずは内科等で身体疾患がないか確認し、心因性(こころの原因)が疑われた場合は心療内科や精神科が専門です。
自律神経の不調による症状は、心臓や消化器、脳の病気など、他の身体的な病気の症状と非常によく似ています。
そのため、まずはかかりつけの内科や総合診療科を受診し、血液検査や心電図などで身体的な異常(器質的疾患)がないかを確認することが重要です。
そこで特に異常が見つからず、ストレスなど心理的な要因が強いと判断された場合に、心と体のつながりを専門に診る「心療内科」や「精神科」が選択肢となります。
最初から何科にかかればよいか分からない場合は、まず内科で相談し、適切な専門科を紹介してもらうのがスムーズです。
病院では、具体的にどんな検査や治療を行うの?
問診、身体診察、各種検査に加え、薬物療法や心理療法、生活指導を行います。
まず、症状や生活背景、ストレス状況などを把握するための詳細な問診が行われます。
内科であれば、他のからだの病気との鑑別のために、症状に応じて血液検査、尿検査、心電図、レントゲン検査などが行われます。この時点で、身体の病気が疑われたら、それぞれの病気に合った治療を行います。
心理的・精神的な要因が強いと考えられるとき、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、
①薬物療法
②精神療法
③生活指導
を組み合わせて行われます。薬物療法が必要な場合は一般的に抗不安薬、抗うつ薬、漢方薬などが用いられます。
並行して、食事・睡眠・運動といった生活習慣の改善や、ストレスとの付き合い方を学ぶための指導も重要な治療の一部となります。
引用元
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働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト こころの耳「自律神経失調症」
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日本臨床内科医会. 「わかりやすい病気のはなしシリーズ55 自律神経失調症」
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日本心身医学会. 「心身症の診断・治療ガイドライン」
記事監修者について
こころの港クリニック京橋・東京駅前 院長
医学博士
日本専門医機構認定精神科専門医
日本精神神経学会精神科専門医制度指導医
精神保健指定医