「電車に乗ると動悸や息苦しさが出る」ときの対処法は?
電車に乗ると動悸や息苦しさが出る原因は?
誰にでも起こりうる症状ですが、持続する場合は治療の対象になる場合もあります。
朝の通勤や帰宅時、満員電車に乗っていると突然、胸がドキドキしたり、呼吸が苦しくなった経験はありませんか?それが何度も繰り返されるようなら、単なる体調不良ではなく、「広場恐怖症」や「パニック障害」の基準に該当し、治療の対象になる場合があります。
広場恐怖症とは、「逃げられない」と感じる場所や状況に対して強い不安を感じる状態で、電車、バス、エレベーター、映画館や劇場などが典型的な例です。特に電車の中では、途中で降りることが難しい、周囲に人が多い、自分の不調を知られたくないといった心理的プレッシャーが重なり、強い動悸や息苦しさにつながることがあります。
電車で動悸や息苦しさが起きる仕組みは?
ささいな原因から生じた症状が、「このまま悪くなったらどうしよう」という不安によって悪化します。
最初は、ごくささいなきっかけから始まります。たとえば、少しお腹の調子が悪かったり、カフェインを摂りすぎていたり、会社での重要な会議に不安を感じていたりといったことです。少し動悸がするな、息苦しいな、という感覚が生じます。
そうした身体の違和感に対して「このまま悪くなったらどうしよう」と考えることで、不安が強まります。すると不安に身体が反応して、動悸や息苦しさなどの症状がかえって悪化してしまいます。こうして、「不安 → 症状の悪化 → また不安」という悪循環に陥り、発作が生じます。
さらに、一度強いパニック発作を経験すると、「また同じようなことが起きたらどうしよう」という“予期不安”が生じ、実際に症状が出やすくなってしまいます。
また、徐々に不安になる場面を回避(混んでいる電車に乗らないなど)するようになり、その行動も結果的に恐怖を大きくしてしまう場合があります。
電車内で動悸や息苦しさが起きたときの対処法は?
その場でできる工夫やリラックス方法をご紹介します
突然、電車内で動悸や息苦しさを感じたときは、次のような対処法を試してみるのもよいかもしれません。
ゆっくりと呼吸を整える
「4秒かけて吸って6〜8秒程度かけて吐く」など、吐く息を長くする腹式呼吸が効果的です。浅く速い呼吸を防ぎ、心身を落ち着かせることができます。
意識を外部に向ける
慣れるまでは少し練習が必要な場合がありますが、例えば目につく赤い色のものを数える、立っている足裏の感覚に集中する、外の景色をみるなど、身体の症状に集中しすぎないことで悪化を防ぎます。
症状は一時的なものであることを自分に言い聞かせる
「この症状は一時的なもので、実際に生命に影響することはないから大丈夫」「不安が不安をよんでいる状態で、苦しさは時間とともに消えていく」と、冷静に考えることで、恐怖を和らげることができます。
比較的安心できる環境から慣らしていく
始発駅から乗る、空いている車両に乗る、なるべく端の席を選ぶなど、一時的に負担が少ない状況から慣れていくことが必要かもしれません。
辛いときは無理せず下車する
それでもつらければ、無理をせず途中下車して気持ちを落ち着けることが大切です。「逃げた」と思わず、「自分を守った」と肯定的に受け止めましょう。
繰り返す動悸・息苦しさを予防するための日常生活の工夫は?
症状の改善には、日々の体調管理も重要です
電車での動悸や息苦しさを予防するには、心と身体のコンディションを整えておくことが有効です。
十分な睡眠を確保する
睡眠不足は自律神経を乱す最大の要因です。毎日7〜8時間を目安に、質の良い眠りをとるようにこころがけましょう。
バランスのとれた食事
朝食抜きやカフェインのとりすぎは、不安を悪化させる原因になります。特にカフェインは発作との関連も強いと考えられ、控えめにすることが推奨されます。
適度な運動を習慣化する
ウォーキングやストレッチ、軽い筋トレなどを取り入れることで、精神の安定にもつながります。
自分に合ったリラックス方法を取り入れる
半身浴する、好きな音楽を聴くなどリラックスできる時間をもつようにしましょう。隙間時間はどうしてもスマートフォンを触ってしまう人も多いと思いますが、過剰な情報は不安を高めます。特に寝る前のスマホ使用は控えめに。
繰り返す動悸・息苦しさは専門機関へ相談を
症状が続くときは、医療機関の受診を検討しましょう
上記のような対処や生活改善をしても、電車に乗るたびに強い動悸や息苦しさが出る、日常生活に支障をきたしている場合は、精神科や心療内科の受診を検討しましょう。
精神科では、パニック障害・広場恐怖などの診断がついた場合、薬物療法(抗不安薬や抗うつ薬)や精神療法(認知行動療法的なアプローチ)が組み合わせて行われます。最近では、オンライン診療でも対応可能なクリニックが増えており、来院に不安がある方でも相談しやすくなっています。
不安や動悸は、決して「甘え」や「気の持ちよう」ではありません。きちんと理解されるべき症状であり、適切な治療によって大きく改善することが可能です。電車に安心して乗れる日常を取り戻すために、ひとりで抱え込まず、ぜひ専門家にご相談ください。
参考記事
【こころの港クリニック京橋・東京駅前】では働く世代を中心に、心の不調に丁寧に寄り添うよう心がけて診療を行っています。
「電車に乗ると動悸や吐き気がする」
「怖くて満員電車に乗れなくなってしまった」
こうしたお悩みがある方は、お一人で抱えず、お気軽にご相談ください。
JR東京駅・銀座線京橋駅・浅草線宝町駅から徒歩すぐ、働く方でも通いやすい立地でお待ちしております。
参考文献 厚生労働省 パニック障害(パニック症)の認知行動療法マニュアル(治療者用)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12200000-Shakaiengokyokushougaihokenfukushibu/0000113842.pdf
記事監修者について
こころの港クリニック京橋・東京駅前 院長
医学博士
日本専門医機構認定精神科専門医
日本精神神経学会精神科専門医制度指導医
精神保健指定医