五月病とは?うつ病との関係について解説
こんにちは。
こころの港クリニック京橋・東京駅前院長の山﨑です。
テレビではゴールデンウィークの話題が流れ、東京駅でもスーツケースを持った旅行者の方がいつもより少し増えているようです。
4月は多くの人にとって変化の大きい季節だと思いますが、そろそろ疲れが出てくる頃ではないでしょうか。
今回は「五月病」について解説したいと思います。
五月病とは?
「五月病」は正式な病名ではないので厳密な定義はありませんが、新生活の疲れやストレスが、ゴールデンウィーク明け頃に心身の不調として現れる状態のことを指すと考えられます。
主に4月から新しい環境(入学、就職、異動など)に入った人は、ゴールデンウィークの連休明け頃(5月頃)に気分の落ち込みや意欲の低下、体のだるさなどの心身の不調を感じることが経験的に多いことから、そのような俗称が使われるようになったと推測します。
現代のように精神科や心療内科への受診が一般的でなかった時代から、この時期に心身の不調を訴える方が多かったのでしょう。
4月は新しい環境に適応しようと、知らず知らずのうちに緊張し、頑張りすぎてしまうことが多いです。その疲れが、ゴールデンウィークの連休で一時的にリラックスした後に、どっと出てしまうことがあります。
また、連休で生活リズムが乱れたり、「休みが終わってまた頑張らないといけない」というプレッシャーを感じたり、あるいは期待していた新生活と現実とのギャップを感じたりすることも、不調の原因と考えられます。
最近では、新卒の場合に学生時代の友人がSNSに投稿するキラキラした新社会人生活を目にして、自分の状態とつい比較してしまう、ということも増えているように思います。
起こり得る症状としては、なんとなく気分が憂うつになる、やる気が出ない、集中できない、疲れやすい、眠れない、食欲がない、学校や会社に行きたくない、などが挙げられます。
多くの場合は一時的なもので、新しい環境に慣れていくにつれて自然に解消していきます。
しかし、症状が長引いたり、日常生活に大きな支障が出たりする場合には、単なる5月病ではなく、「適応障害」や「うつ病」という診断に該当する場合もあります。
無理せず休息をとり、友人や家族、学校の先生や会社の上司・同僚などに相談することが大切です。症状が続くようであれば、早めに精神科や心療内科などの専門機関に相談しましょう。
五月病とうつ病の関係は?
五月病はあくまで一時的な心身の不調ですが、症状が長引いたり重くなったりすると「うつ病」の可能性も考えられます。
五月病はどちらかというと「適応障害」という精神科の病気と類似の概念であると考えられ、新しい環境への適応疲れやストレスが原因で起こる一時的な心身の不調であり、原因となった環境に慣れたり、十分な休息をとったりすることで、多くは受診することなく自然に回復していると思われます。
一方、「うつ病」は、脳の機能的な問題も関わっている精神疾患です。
単なる気分の落ち込みだけでなく、興味や喜びの喪失、睡眠障害、食欲の変化、集中力の低下、否定的な考えなどが2週間以上続き、日常生活に大きな支障をきたします。
うつ病は、適切な治療(休養、薬物療法、精神療法など)が必要な病気です。
五月病のような状態が単なる一時的な不調にとどまらず、2週間以上続いたり、症状が非常に重かったり、日常生活(学業や仕事、家事など)を送るのが困難になったりした場合は、うつ病や、あるいは適応障害の診断に該当する場合があります。
症状が長引く、または辛いと感じる場合は、早めに精神科や心療内科を受診し、専門家の診断を受けることが非常に重要です。
また五月病のようなストレス状態が、うつ病発症の引き金になることもあります。
ストレスの緩和のためには、日々のセルフケアが重要です。
まずは時々自分の状態を振り返ってみる機会をもうけ、自分にあったストレス解消の選択肢を多く持つように心がけましょう。
(とは言っても言うは易く行うは難し、私自身も忙しさを理由にストレス解消の行動をとれていないことも多いので、自戒を込めています)
まとめ
五月病は一時的な症状であり、適切な休息や新しい環境に慣れることで多くの場合改善されますが、長く続く場合は精神科や心療内科などの専門家にご相談ください。
これは経験的な内容にはなってしまいますが、気持ちの落ち込みで精神科・心療内科にご相談にいらっしゃる方は、4〜6月頃に多いです。
くれぐれも体調を崩されないよう、この記事を見たらなにか一つでも、積極的なストレス解消の行動をとってみましょう。
参考文献
厚生労働省 こころの耳:うつ病の主な症状と原因
https://kokoro.mhlw.go.jp/about-depression/ad002/
Kendler KS, Karkowski LM, Prescott CA. Causal relationship between stressful life events and the onset of major depression. Am J Psychiatry. 1999 Jun;156(6):837-41.
文責 山﨑龍一(医学博士、日本専門医機構認定精神科専門医、日本精神神経学会精神科専門医制度指導医、精神保健指定医)