梅雨にうつが増える?
「梅雨になるとうつが増える」のは本当?
梅雨の時期の気象変化は心身に影響し、うつ症状の悪化や発症リスクを高める可能性があります。
梅雨の時期は、低気圧が頻繁に通過し、日照時間が減少し、湿度が高くなるなど、気象条件が大きく変動します。
これらの環境変化は、私たちの体調をコントロールしている「自律神経」(体の機能を自動的に調整する神経)の働きに影響を与えやすいと言われています。自律神経のバランスが乱れると、頭痛、倦怠感、めまい、気分の落ち込みといった「気象病」や「天気痛」とも呼ばれる不調が現れることがあります。
さらに、日照時間が短くなることは、精神の安定に関わる神経伝達物質の「セロトニン」の分泌量低下やの可能性があります。セロトニンは、太陽光を浴びることで生成が促されるため、日照不足はセロトニンの不足を招き、不安感が増したり、眠りが不安定になったり、気分が沈みやすくなったりすることが知られています。
これらの要因が複合的に作用することで、梅雨の時期には元々うつ傾向のある方の症状が悪化したり、新たにうつ症状を経験したりする人が増える可能性があります。不調を感じたら無理せず休息を取り、症状が続く場合は医療機関に相談することが大切です。
梅雨の時期の気分の落ち込みの対処法は?
一般的な対応としては、生活リズムを整え、軽い運動や日光浴、好きなことで気分転換を行うなどが挙げられます。
梅雨の時期の落ち込みは、上記の通り気圧の変動や日照不足が主な原因だと考えられています。そんな時は、まず生活リズムを整えることが大切です。毎日同じ時間に寝起きし、可能な範囲で食事のバランスにも配慮しましょう。
軽い運動を取り入れるのも効果的です。雨で外に出にくい日は、室内でできるストレッチやトレーニングなどがおすすめです。最近はyoutubeなどで様々なトレーニング動画が配信されているので、自分の体力にあった難易度のものにチャレンジしてみるのもよいかもしれません。体を動かすことで血行が良くなり、気分もスッキリします。
また、日光を浴びることも重要です。セロトニンは太陽光を浴びることで分泌が促されるため、曇り空でも日中は窓際で過ごしたり、雨の合間に短時間でも外に出て光を意識したりすると良いでしょう。
さらに、自分の好きなことやリラックスできることを見つけて気分転換を図るのも有効です。読書、音楽鑑賞、映画、アロマテラピー、ゆっくりお風呂に入るなど、自分が心地よいと感じる時間を短時間でもよいので意識的に作るようにしましょう。エアコンなどをうまく使って室内の湿度を適切に保つことも、不快感を和らげるのに役立ちます。
これらの一般的なセルフケアを試しても気分が晴れない、つらい状態が続く場合は、無理せず専門家に相談することも考えてみてください。特に、眠れない、気持ちが落ち込んで日常生活に支障が出ている状態が2週間以上続くような場合は、早めに受診を検討してください。
参考文献
白川ら. 日本人の季節による気分および行動の変化. 精神保健研究 39 ; 81-93, 1993
文責 山﨑龍一(医学博士、日本専門医機構認定精神科専門医、日本精神神経学会精神科専門医制度指導医、精神保健指定医)