社交不安障害
社交不安障害はどんな病気ですか?
社交不安障害(SAD: Social Anxiety Disorder)は、人前で話す、注目を浴びるといった社会的な状況に対して強い不安や恐怖を感じる疾患です。
誰しもそのような場面では緊張するとは思いますが、この不安が過剰で日常生活や仕事に長期的に支障をきたすような場合は、治療がすすめられます。
日本では、およそ10人に1人が一生のうちに社交不安障害を経験するとされており、男女差はあまりないとされています。
10代~20代の比較的若い年代でよくみられ、思春期に発症することが多い疾患です。
放置すると慢性的に症状が持続し、進学や就職などといった人生の重要な場面で大きな影響が出てしまうことがあります。
社交不安障害でよくみられる症状は?
社交不安障害の症状は主に以下の通りです(DSM-5を参考)。
こころの症状
強い不安や恐怖
他者から批判されたり、恥をかいたりすることへの過剰な恐れ。
予期不安
イベントやプレゼンの前に「また失敗したらどうしよう」など強い不安を感じる。
からだの症状
- 動悸、息切れ、発汗、震え
- 顔が赤くなる
- 胃痛や吐き気
行動面の変化
- 社会的な場面を避ける(飲み会、会議、発表など)。
- 会話を避け、相手の目を見て話すことができなくなる。
これらの症状が長期間にわたり続くことが特徴です。
特に「失敗するかもしれない」「自分が恥をかくかもしれない」といった考えに強く支配され、そのような場面を回避するようになります。
社交不安障害の治療にはどんな選択肢がありますか?
薬物療法
抗うつ薬(SSRI/SNRIなど)
脳内の神経伝達物質であるセロトニン神経系などに作用し、社交不安障害における不安や恐怖を軽減するとされています。
効果が出るまで2~4週間かかることが一般的です。
抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)
比較的即効性があり、不安の発作に頓服として用いられることもあります。
長期に使用した場合に依存のリスクがあるため、使用量が増加しないよう注意して用いられます。
その他
緊張による身体的な症状(震えや動悸)を緩和する目的でβ遮断薬が使用されたり、不安を和らげる漢方薬が使用されたりすることがあります。
精神療法
社交的な場面において自身に過剰に注意が向いてしまったり、他者からの視線に対して偏った考えを持っていたりすることに気づくことを促し、対処するスキルを身につけていきます。
認知行動療法(CBT)として実施される場合もあります。
社交不安障害の経過は?
社交不安障害は、適切な治療を受けることで多くの方が症状を改善できます。
ただし、未治療の場合は症状が慢性化し、他の精神疾患(うつ病や依存症)を併発するリスクが高くなると考えられています。
治療期間
薬物療法と精神療法を併用して、半年以上のスパンで治療を行っていくことが多いです。
重症度に応じて、再発防止のため、より長期に治療を継続する場合があります。
注意点
薬を服用するだけでなく、社会的な状況に少しずつ慣れていくなど行動面での治療も重要です。
医師と相談しつつ、無理なく取り組んでいくことが大事です。