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睡眠の重要性と不眠症の基礎知識

[2025.05.11]

睡眠とは何か?人間に不可欠な休息の仕組み

日々の健康と心身のバランスを維持するために、良質な睡眠は欠かせません。例えば、寝不足の日に集中力が落ちたり、感情が不安定になった経験はないでしょうか?
睡眠は、単なる「休む時間」ではなく、脳の情報整理、ホルモンの調整、体の修復など、私たちの健康を根本から支える機能を担っています。

不眠症とは?ただ眠れないだけではない“疾患”

「不眠症」とは、夜間の不眠症状と日中の眠気による機能障害が週3回以上続くこととされています。3ヶ月以上の長期にわたる場合は慢性不眠障害とされる場合もあります。一時的なストレスによる不眠とは区別されます。

日本人成人の約3割が何らかの不眠症状を経験し、約1割が不眠症と診断されています。個人の生活の質だけでなく、社会的損失にもつながる重要な問題です。

不眠症の主な4タイプ

  • 入眠困難:寝つきが悪く、眠るまでに時間がかかる
  • 中途覚醒:夜中に目覚め、再び眠ることがが難しい
  • 早朝覚醒:早朝に目が覚め、そのまま朝まで眠れない
  • 熟睡感の欠如:睡眠時間は十分でも眠った感じがしない

不眠症の治療:薬と生活習慣の両輪で改善を

不眠症治療の基本は、原因となる疾患の除外と生活習慣の見直しです。睡眠薬は補助的手段であり、長期的には薬に頼らず眠れる状態を目指します。
例えば、足を骨折したときに松葉杖を使うことがあると思いますが、リハビリを行って骨がくっつけば補助がいらなくなります。
あまり焦って睡眠薬をやめようとする、もしくは減らそうとする必要はありませんが、いずれ服用しなくなるものという意識は重要です。

睡眠改善のための生活習慣チェックリスト

  • 日中に軽い運動を取り入れる
    • ウォーキングなどの軽い有酸素運動でも効果があります。特に朝の光を浴びながら運動するのが最もおすすめです。
  • 寝室の光・音・温度を整える
    • 遮光が不十分、ベッドパートナーのいびきがうるさい、寝室が暑すぎる/寒すぎる、などはよくみられる問題です。
  • 「〇時間寝ないといけない」というこだわりを減らす
  • 就寝前の過食・空腹を避ける
  • カフェイン・アルコール・喫煙の制限
    • 特にカフェインは午後4時以降は避けるようにしましょう。コーラなどの飲料にも含まれているので注意です。
  • 寝る前の考え事を減らす工夫
    • 日記などに悩み事を書いてしまうことも有効です。
  • 毎朝同じ時間に起きて体内時計を整える
    • 土日に寝溜めをすると、月曜日が辛くなります。休日も可能な限り起きる時間をそろえるようにしましょう。

睡眠薬による治療と注意点

上記のような非薬物療法だけで改善が見られない場合は、医師の判断で睡眠薬が処方されることがあります。下表に代表的な薬とその作用を示します。

薬の分類 作用機序 主な薬剤(商品名)
GABA受容体作動薬
(ベンゾジアゼピン系、非ベンゾ系)
脳の活動を鎮め、眠りを誘導する マイスリー®、ルネスタ®、ハルシオン®など
メラトニン受容体作動薬 ホルモン類似の成分で体内時計を調整し自然な眠気を促す ロゼレム®
オレキシン受容体拮抗薬 覚醒に関わる部位をピンポイントで抑制し、睡眠導入を助ける ベルソムラ®、デエビゴ®、クービビック®

睡眠薬使用時の注意点

  • 服薬後はすぐに寝る(服用後の入浴は避けましょう)
  • アルコールと併用しない
  • 朝まで眠気が残る場合がある(効き具合には個人差があります)
  • ふらつきによる転倒に注意
  • 勝手に中止せず、医師と相談の上で調整する

まとめ:不眠症は適切な治療と習慣で改善できます

  • 不眠症は日常生活に支障をきたす疾患だが、治療可能
  • 生活習慣の改善が治療の基本
  • 睡眠薬は補助的な手段として慎重に使う

参考文献


文責 山﨑龍一(医学博士、日本専門医機構認定精神科専門医、日本精神神経学会精神科専門医制度指導医、精神保健指定医)
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