メニュー

休職したほうがよいか判断がつかないとき

[2025.08.20]

精神的な不調を感じ、休職を検討されている方へ:休職の判断基準について

当院では、持続する気持ちの落ち込みや、仕事に関連して動悸などの症状が出てしまうといった精神的な不調により受診される方が多くいらっしゃいます。診察の結果、治療に専念するために休職が望ましいと判断されるケースも少なくありません。しかし、休職という選択肢をご提示した場合に、多くの方がその決断を躊躇します。もちろん、これまで休職を経験されたことのない方であれば、それは自然な反応だと思います。

そこで今回は、「休職の要否を判断する基準」および「多くの人が休職を悩むポイント」についてまとめたいと思います。

休職を判断する上で最も重要な基準

結論から申し上げますと、休職すべきか否かの判断は、ご本人の心身が「治療に専念する必要のある医学的な状態にあるか」という点を最優先にすべきです。

これは自明のことと感じられるかもしれませんが、実際の診療場面では、以下のような業務上・環境上の懸念から、多くの方が休職の決断をためらわれます。

  • 担当業務の遂行責任

  • 職場関係者への配慮

  • 人事評価への影響

  • 経済的な問題

これらの要因は確かに重要ですが、判断基準が複雑化するほど、本来最も考慮すべきご自身の健康状態から意識が逸れてしまい、適切な判断が困難になる傾向があります。責任感の強い方ほど、その傾向は顕著です。

休職を躊躇させる要因に関する医学的考察

上記の懸念について、医学的な観点から考察します。

  • 業務継続に関する懸念(例:「自分がいないと仕事が進まない」)
    • 個人が不在になることで組織全体の機能が停止することは、健全な組織運営において通常想定されません。不測の事態に備え、業務を代替・分担できる体制を構築するのが企業の責務とも言えますし、メンタル不調のときは「私がやらないと」という思い込みが強くなっていて、休職しても意外となんとかなった、というケースが多くあります。メンタル不調でなくても、不慮の事故や病気で長期の休養が必要になるケースはあります。必要なときに治療に専念することは、ご自身の健康を守る上で不可欠な権利です。

  • 職場関係者への配慮(例:「同僚に迷惑をかけたくない」)
    • 精神的な不調を抱えた状態では、ご自身が気づかないうちにパフォーマンスが低下し、すでに周囲に何らかの影響が及んでいる可能性があります。無理に就労を継続するよりも、一時的に業務を離れて治療に集中し、改善した状態で復帰する方が、長期的にはご自身と職場の双方にとって良い結果をもたらす可能性があります。

  • 人事評価への影響
    • 業務遂行能力が低下している状態では、すでに人事評価に影響が出ている可能性も否定できません。休職して先に心身の状態を回復させることに専念し、再び本来の能力を発揮できるコンディションを取り戻すほうが、結果的に自身の評価を下げずにすむ可能性もあります。

  • 経済的な懸念
    • 休職期間中の経済的な見通しについては、傷病手当金(健康保険組合から給与の一定割合が支払われる制度)などのの活用も積極的にご検討ください。ご家族様がいる場合は、みなさんで協力して生活設計を検討することが必要な場合があります。会社によっては休職時に独自に使える制度がある場合もあるため、心配な場合は一度人事担当者に相談してみることもよいでしょう。

治療を優先する重要性

治療が必要な状態で就労を継続された場合、症状が増悪する医学的なリスクが高まります。精神的な負荷が継続した結果、心身が限界に達し、出勤自体が困難になり、結果的に休職になってしまうことも少なくありません。そうなると治療が長期化したり、場合によっては入院が必要になったりと、回復への道のりがより険しくなる可能性があります。

したがって、休職の判断は、業務や環境の都合ではなく、あくまでご自身の「治療の必要性」という医学的見地に基づいて行っていただくことが重要です。

留意すべき点として、本記事では休職を安易に推奨するものではありません。もちろん、就労を継続しながら回復が見込める治療法がある場合は、そちらを優先するのが原則です。医師と十分に相談の上、ご自身にとって最適な治療方針を決定していきましょう。

記事監修者について

山﨑 龍一

こころの港クリニック京橋・東京駅前 院長
医学博士
日本専門医機構認定精神科専門医
日本精神神経学会精神科専門医制度指導医
精神保健指定医

医師の紹介

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME