休職・復職の相談
休職・復職における主治医の役割
主治医は診断・治療だけでなく、休職の必要性や復職の可否を医学的に判断して診断書を作成するなど、重要な役割を担っています。
まず、患者さんの心や体の状態を精査し、適応障害やうつ病などの病気の有無について診断し、薬物療法や精神療法などを行います。そして、患者さんが「今は仕事をするのが難しい」状態だと判断した場合、「休職が必要」という医学的な意見を書いた診断書を作成します。会社はこの診断書を見て、休職の可否について判断します。
休職中も治療を続け、患者さんの回復具合を見守ります。一般的には1〜2週間に1回程度の診察を行いつつ、治療を調整したり、休職中の生活の指導を行います。
十分に回復し、再び働ける状態になったと判断したら、今度は「復職が可能」という診断書を作成します。ただし、復職について最終的に判断をするのは会社であり、「働ける状態である」と証明する義務は、ある意味患者さんのほうにあると言えます。
当院では、産業医として活動する医師が治療にあたるため、会社や産業医がどのような基準で復職を判断しているのかを意識しながら、治療中から準備することができます。
一般的には、
- 生活リズムが安定している(例:出社できる時間に起床し、昼寝の必要性がない)
- 日中にある程度の活動が可能である(例:図書館で1日4時間以上、資格の勉強ができる)
- 業務に支障のある症状が改善している(例:出社が必要な仕事なら、通勤が問題なくできる)
などの基準で判断されることが多いです。
このように主治医は、医学的な専門家として、患者さんが安心して休養に専念し、そしてスムーズに仕事に戻れるように、診断、治療、そして休職・復職に関する医学的な判断と助言を行う重要な役割を担っています。
休職した際に使える公的な制度について
メンタルヘルスの問題で休職した際には、傷病手当金、、自立支援医療、労災保険(業務が原因の場合)、リワークなどが利用できる場合があります。
まず、休職中の生活費を支える制度として、健康保険の「傷病手当金」があります。
これは、業務外の病気やケガで連続して3日間仕事を休み、4日目以降も働けない場合に、給料の一部が最長1年6ヶ月間支給される制度です(加入している健康保険によりますので、詳細はご確認ください)。
また、精神疾患の通院治療費の自己負担を軽くする「自立支援医療(精神通院医療)」が利用できます。
この制度を利用することで、通常3割の負担が1割になることで、金銭的にも通院しやすくなります。
より長期に治療が必要になる場合、税金の控除や福祉サービスの利用が可能になる「精神障害者保健福祉手帳」といった制度もあります(対象になる病名や重症度は限られているので、全員が対象になるわけではありません)。
もし、仕事の強いストレスなどが原因で精神疾患になったと認められた場合は、「労災保険」から休業補償給付などが受けられることもあります。
さらに、スムーズに職場復帰するための支援として「リワークプログラム」があります。これは、地域障害者職業センターや医療機関などが提供するプログラムで、生活リズムを整えたり、ストレス対処法を学んだり、模擬的な作業を行ったりして、再び働くための準備をします。
これらの制度を利用するには申請が必要で、条件もありますので、主治医、会社の担当者、ハローワーク、お住まいの自治体の窓口などに相談してみましょう。
休職中の過ごし方について
休職中は心と体をしっかり休ませ、医師の指示に従い、焦らず回復に専念することが最も大切です。
うつ病などのメンタル疾患で休職する一番の目的は、心と体を十分に休ませて回復することです。
まずは仕事のプレッシャーやストレスから完全に離れ、「何もしない」「ゆっくりする」時間を意識的に作りましょう。
中には後ろめたいという気持ちが生じてしまう方もいらっしゃると思いますが、罪悪感を感じる必要はありません。
休養は治療の大切な一部です。 主治医の指示を守りましょう。
処方された薬をきちんと服用し、定期的に通院して、自分の状態を正直に伝えることが重要です。
医師は回復具合を見ながら、過ごし方についてアドバイスを行います。
生活リズムを整えることも大切ですが、無理は禁物です。
起きる時間や寝る時間、食事の時間をできるだけ一定に保つよう心がけると、体調が安定しやすくなります。
ただし、「~しなければならない」と自分を追い詰めないようにしましょう。
少し元気が出てきたら、医師と相談の上で、散歩や軽いストレッチ、読書、音楽鑑賞など、自分が心地よいと感じる活動を少しずつ取り入れてみましょう。
仕事に関する連絡や、過度な情報収集(特にSNSなど)は、回復の妨げになることがあるので、意識的に距離を置くことも有効です。
孤独を感じやすい時期なので、家族や信頼できる友人、あるいは支援機関の相談員など、定期的に安心して話せる相手とコミュニケーションをとることも心の支えになります。
回復には時間がかかることを理解し、焦らず、自分のペースで過ごすことを心がけてください。
これらの段階を経て本格的な復職に向けた訓練に移行していきます。
仕事を意識した生活リズムにする、図書館などでまとまった時間(半日程度)資格試験などの勉強をしてみる、会社の近くまで行ってみて症状が悪化しないか確認してみる、など、一定の負荷を自分にかけることで、復職して問題ないかを判断します。
通常は比較的早い人でも復職まで2〜3ヶ月かかることが一般的です。焦らず、医師と相談しながら進めてください。
文責 山﨑龍一(医学博士、日本専門医機構認定精神科専門医、日本精神神経学会精神科専門医制度指導医、精神保健指定医)